今から、１５年ほど前に、　
福岡で教えて欲しいと言うクラブに出向いていったら・・
コートに着くと、何だ？チビで、デブで、髪は金髪で、色黒で
サーフィンならともかく、テニスなんて出来るのか？って眼差し
イテテテ痛いよ～って感じ、主催者側も、不信感たらたら、
『お前らも、呼んでおいてそれはないだろう』
追い討ちをかけるように、うちのクラブの成長株と
エキビジションをお願いしますって来た

オイオイ、プロと言っても、ツアープロじゃないんだよ
教えるプロなんだから、勘違い甚だしい
今さら、品定めと来るわけ？此処まで来て逃げるわけには行かず
準備に取り掛かった、
オォ～と歓声があがり、人垣をかき分け声援の中から出て来たのが
身長も１８０ｃｍ近くあり、若くて、爽やかな１７才の男の子
見た目も、人気もあちらの方がプロに見える

試合は８ゲームマッチ、ウォーミングアップのラリーが始まった
凄いハード３～４球打ち返したら、追い込まれてミスしてしまう
ボレー練習に入ると、丁寧な打ち方、
スマッシュもストロークほど脅威には感じない

よし、弱点は、前！こいつに、此れだけは伝えたい
自分はコーチとしての試合をしようと思った

トスして相手の鋭いサーブが入る、当てるだけは出来るから
ドロップショットで前に落とす、走って来てコースを打った所で
読んでいてパッシング、それを取った所で、オープンコートにロブ
走ってクリアした所、またまたドロップ
勿論エースで決められたり、途中でミスしたのもあるけど
拍手喝采の中、ゲームは１－６と敗戦模様
所が、少年は、３試合も続けてプレーした時のような汗だらだら、
此処から、様子が変り、ロブに対する反応が遅くなり
スマッシュミスも増えてきて、皆の応援もタメ息に変る
ゲームカウント６－６、ドロップショットを打ったら、
走って来て、踏ん張れず、転んで０－３０
自分も、走って行き、少年が立ち上がった所を
顔にバシってビンタ、
『お前ってこんなもんか？ちゃんと走れば取れる』
会場は、騒然・・・ザワザワ
お構いなしに構える、少年は、目の色が最初の時に戻った
０－３０から見事、ひっくり返され、前に落としても
ロブで抜いても決められ６－８で負けた

ま～相手の弱点をついて、精神的にボロボロにして
勝つ事も出来るけど、それでは、ただの意地悪オジサンで終わる
コーチとしては、勝つ喜びよりも、相手が成長する喜びの方が勝

少年は、『ありがとう御座いました』って握手を求めてきて
『うちのコーチ達、お前は凄い凄いといつも、言われてたので
　自分でも、凄いと思ってました、今日の試合で、
全然凄くないと解りました、頑張って、前も鍛えます
それにしても、ちゃんとしたストローク、
一度も打たせて貰えませんでしたが、こんな試合もあるんですね』

言うまでも無く、その後のレッスンは、大盛況に終わって
面白かったけど、この主催者が嫌いになり、福岡は行かなくなったよ
それに、福岡には素晴らしい指導者が
いっぱい居るから、お呼びでないね